どうする?愛のかたまり!
舌を押しつけ合い、温かな咥内を味わった。
抵抗するそぶりも見せないどころか、唇を離して呼吸を整えさせてやれば「あふ…」と甘い息を吐き自ら顔を寄せてくる。
マサキがこれでは本当に、途中で止めてやれる可能性は皆無だろう。
「っとにお前は……」
「?」
日に日に自制が利かなくなるのが恐ろしい。
笑顔を向けられる度、キスをする度、肌に触れる度に血が沸きたって胸まで苦しくなるなんて。
「いや、なんでもない。こちらの話だ」
開花寸前のつぼみのようなマサキを手折らず、優しく、慈しみ深く構ってやるのは想像以上に困難で、己を律する術を危うく見失いかけるほど。
それでもショウは、このもどかしくも甘やかに流れる時を、存外気に入っていた。
「今夜は随分と積極的だな。いつもみたいに、恥ずかしいって逃げないのか?」
「だって久しぶりだし…唇、気持ちいいから」
もっとしたいと呟いて、勝手に頬を赤く染める。
はじめはキスも覚束なかったのに、最早あれが遠い過去の出来事のようで懐かしさすら感じてしまう。
「オレは殿下みたいに経験豊富じゃないからさ…
あんな場所に薬塗られるのだって緊張するし、ドキドキしちゃって大変なんだよ?」
「……俺も、緊張するような経験は積んでない。好きな奴を抱いたのはお前がはじめてだ」
「そう、なの?」
「ああ」
最後もマサキがいいとは流石に口に出せなかったものの、そうであれば良いとは思う。
あの夜は、ショウにとっても特別だった。
ちいさな孔を真っ赤に腫らし肩で息をするマサキを見て眩暈がするほど昂った。
労るならまだしも再び己を捩じ込んで、あの狭い場所をもっと辱 めてやりたいと欲に駆られた。
ジュンにも「手加減してやれ」と言われたし、自分が最低だった自覚もある。
次こそひどく傷つけてしまうかもしれないと思えば、迂闊に手を出せなくなるくらい。
そんな躊躇いがマサキを不安にさせていたとはまさか、夢にも思わなかったけど。
抱き潰されてもいいなんて簡単に頷かれると、少し、困る。
求められて上手く躱してやれるほどショウは大人ではなかったし、余裕だって無けなしだ。
「マサキ…その顔あまり外で安売りするなよ?」
「その顔って?」
視線がからめば暢気に笑いかけてくる。まったく、いつまで経っても危機感のない。
目の前の男が腹の中でなにを考えているのか、想像したことはないのだろうか?
とろりと溶けた焦茶色の瞳を見下ろして、朱の差した頬をむぎゅっと指でつまんでやった。
「こ、の、間抜けヅラのことだ」
「ふひゃ!? ひっはりゃにゃいれよぉ~」
優しくて甘ったれで、憎たらしいほど愛おしい。
この笑顔が守られることを願うと同時に、己の手管で歪めたくてたまらない。
「もおっ、痛いってば…安売りってなにが?」
「可愛いから、俺以外に笑いかけるなと言う意味だ。こら、聞き返しといて赤面するな」
額に小さくキスをして、もの言いたげにぱくぱくしている唇をぺろりと軽くなめてやる。
マサキの言動に深い意味が無いのは承知している。
が、しかし、瞳を揺らし口を噤み、嬉しいような恥ずかしいような複雑な顔で上目遣いをされると腰にもクルものがあるわけで。
「ふふっ、殿下って変わった趣味してるよねぇ」
「うるさいな。お前が言うな」
「……でも嬉しい。ありがと」
ベッドの上で肌に触れて、「オレにかわいいなんて言うの殿下くらいだよ」なんて。
はにかまれたせいで、再び心臓が早鐘を打つ。
「身体、本当にもうつらくないんだな?」
「ん、大丈夫だよ。薬も塗ったし…」
「マサキが? 自分で?」
「そりゃあね、あんなこと誰にも頼めないもん。
ていうかもう薬なんて要らないと思うんだけど、まだ毎日塗らなきゃダメかなぁ?」
夜着の裾から手を入れてすべらかな腿のうち側を撫でさする。
しっとりと吸いつくような肌触りが心地いい。
擽ったいのか眉を寄せて困り顔になるマサキが可愛くて、もっと慌てさせたくて、
腰骨の上で結わえた紐を指でくつろげ、締め付けをなくしてやった。
「アレはまぁ、治療というより手入れの一環だからな。諦めろ、俺の楽しみでもある」
「変なこと楽しみにしないでよ。もう全然腫れてないのに…ナカ、 触っても痛くなかったし」
「それは、確かめてみろという誘いなのか?」
軽口に目を泳がせて、少しだけ身を固くする。
これが演技ではなく素のリアクションだというのだから天然というのはタチが悪い。
「マサキ」
「う、っ、はい……それもある、けど……
殿下はこんなんで、オレに誘われてくれるの?」
「まぁな。他ならぬ寵姫の誘いならば充分だ」
色事や駆け引きなど知りませんという顔をして、素直な身体はしっかり反応しているらしい。
引けた腰を抱き寄せると芯を持った感触が腹に当たり、ショウは無意識に口角をあげた。
つづく