ホラーファッション通販
ホラー 家族が家族でいられる時間は、長くはない。
ー15年前の4月某日ー
新学期が始まる。
オリエンテーション。
講義数が増えるため、バイトのシフトを減らさなければ。
・
PCの電源を入れ、テキストアプリを立ち上げる。
頭は真っ白。
仕方なく、好きな本を書き写すことにする。
キーボードを打つ練習にもなる。
・
32ページ書き写したところで、今日のところは終了。
髪型を変えよう、髪色も変えよう、と思い立った。
本屋でファッションかヘアスタイル雑誌を買いに出かけることにする。
(※当時の僕は、CCの真似をしてピアスを開け、髪を茶色にカラーリングをしていた。
好きな人には近づきたい気持ちに正直だった。
身長がCCと同じことを、得意に思っていた。
可愛い奴だ)
・
ユノに電話をかけて、遊びに行っていいか尋ねる。
僕はユノに会いたい。
ユノといるとリラックスできるし、ドキドキできる。
CCに一度でいいから会ってみたい。
「何十万ものファンがいるのに、どうして結婚をしたのか?」尋ねてみたい。
CCを前にした時、僕はどうなってしまうんだろう。
僕には2人、会いたい男がいる。
・
本屋で、何冊かの雑誌を手にとって、適当なものがないか探していた。
CCが取り上げられた雑誌はないか、無意識に探していた。
表紙の見出しのひとつにCCの名前をみつけた。
CCの文字には、僕はとても敏感なのだ。
それはゴシップ誌だった。
「またかよ」なことが起きた。
血の気がひいたのち、全身の表面が熱くなった。
雑誌を持った指が震え、呼吸が苦しくなった。
CCのプライベートを隠し撮りしたものだった。
高級スーパーマーケットで買い物をするCCの写真だった。
記事によると、この日は近くに結婚相手はおらず、CC一人で来店していたようだ。
キャップを目深にかぶり、デニムパンツとニットといったラフな恰好だった。
高性能のカメラのレンズは、ショッピングカートを押すCCの左手をとらえていた。
ご丁寧にそこだけクローズアップしている。
CCは既婚者である事実を目で見える形で見せつけられ、打ちのめされた僕。
ダメだなぁ。
僕はまだまだ、容易に心が揺さぶられてしまう。
・
この件は、ユノには黙っていよう。
何にショックを受けたか説明をするうち、心が冷えていってしまう。
彼氏と別れたばかりのユノに、僕の心配ばかりさせるわけにはいかないのだ。
遅れてやってきたユノと、ドラッグストアへ行く。
・
「俺もブリーチする」と、ユノは言い出し、ユノの部屋は即席の美容院となった。
上半身裸になり、キャスター付き椅子に腰かける。
穴を開けたゴム袋を頭からかぶり、互いの髪を染め合った。
ユニットバスで互いの頭を洗ってやり、ついでに裸になってシャワーを浴びる。
放置時間を多く取りすぎた結果、僕の髪は藁みたいな色になってしまい、ゴワゴワと梳く指にひっかかる。
泣きそうになっていると、ユノは「よく似合ってるけどなぁ。気に入らないなら、白髪染めで染め直すか?」と僕を慰めてくれた。
・
21:00
僕らはベッドにもたれて、床に並んで座っていた。
【一緒に観た映画】
エクソシスト
(※今も昔もユノは、怖がりなのにホラー映画を観るのが好きなのだ。
『チャンミンが一緒だから好きなんだよ。一人じゃ絶対に無理だ』なんて、可愛いことを言ってくれる)
映画の始めから最後まで、怖がるユノと手を繋いでいた。
軽いキスを数回。
ユノ
「俺たち、どうしてキスしてるんだろうね?」
僕
「...したいから」
ユノ
「ははっ、正直だね」
僕
「ユノは?」
ユノ
「チャンミンと一緒。
彼氏と別れたばっかりなんだぞ?
おかしいなぁ」
僕
「どうしてしたくなったの?」
ユノ
「え~、俺に言わせるの?
...そういうことだよ」
僕
「そういうこと?」
ユノ
「分かるだろ?
そういうこと!
あ~~、恥ずかしい!
...チャンミンは?」
僕
「ユノと一緒だよ。
『そういうこと』」
CCの薬指について黙っておいてよかったと思った。
していたら、この会話はできなかったからだ。
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