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![たん・たんか・たん 美村里江歌集 [ 美村里江 ]](http://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/2643/9784791772643.jpg?_ex=480x480)
たんか ハート&アクション
さとみはいつも自分よりも
オレの幸せを願ってくれてた……
最近、穏やかでイラつくことなど
全くなかった時のさとみとの
生活ばっかり思いに浮かんでくる。
なんの心配もせずに安心して
仕事が出来ていたんは
さとみのおかげやったんやと……
オレは、ほんまにアホや……
あの頃、自分がどれだけ愛されて
甘やかされてたんかが
全然わかってへんかった。
人の心配が出来るような、
そんな偉そうな人間じゃない！
失ったものの大きさを改めて
肌で感じながら、これからの
尚子との関係をどう修復したら
いいのかずっと考えてた。
ひなのためにも、どうにかして
以前のような三人の関係に
戻したいなと思っていた。
それには尚子だけを責める
わけにもいかへんし。
オレ自身も、いつまでも
さとみの亡霊を追っかけないで
変わっていかんとあかん！
自宅マンションが近づき、
ふと入口を見ると、男性らしき人が
立っているのが見えた。
最初は同じマンションの住人やと
気にも止めへんかってんけど
入り口に近づくにつれ自分の顔が
強張っていくのがわかる。
なんで？信じられへん思いで
鼓動が波打つのを感じた。
その人物がこちらに向かって
来るんが見えると、咄嗟に
路地に入り身を隠した。
男が通りすぎたのを確認して、
..............愕然となる。
なんで……あいつが……？
ほんまかいな！
混乱する頭を整理しようとしても
訳わからんでまとまれへん。
尚子が会ってたんって……
ハァ〜って大きくため息が出た。
そして、ようやく一つの結論が
..........頭に浮かんだ。
尚子が会ってたんは、元旦那の
中田だったということに……
いい関係って、どうして
長続きしないんだろう？
たんか！新・イチバン！
健の気持ちにホッとした。
この事で落ち着いた
方向へ向かうと思いたかった。
正直な話、木下があたしに
したことを謝ってくれれば
慰謝料なんか一銭もいらない。
お金で解決できる
問題じゃなくって
許せる訳ないやん！
木下父はこう言った。
「奥さんがいると知りながら
お付き合いした娘も悪い。
娘がキチンと出来ない
のであれば当然
慰謝料という形で
許していただけませんか？」
咄嗟に木下母は
「お父さん！なんで！
訳の分からん事
言わんとって欲しいわ。
お金渡したら
この人たちの
思うツボやんか！」
マミの気持ちは
どうなるん？」
言葉悪いけど
コイツはあほや！
非常識も
甚だしい。
それを受けて木下父は
「今のこちらの話を聞いて
お金が欲しいってホンマに
思とんのか？
ワシが同じようにしたら
お前は同じ事を言えるんか？
マミがどんな気持ちで
付き合いしたんかは
分からんで！
けどな！あかん事やんや！
いくら好きでもあかん事や！
マミは謝れへんし
お前は訳わからん事を
ぬかしよる！
いい加減目を覚ませ！」
と言って木下父は
「申し訳ございませんでした」
目を潤しながら
床に頭を擦り付けた。
常識のある
お父さんやのに.....
「お父さん。頭を
あげてください。
お父さんの気持ちは
十分伝わっています。
どうか頭をあげてください」
言葉に出来ひん
複雑な思いでした。
親としての我が娘が
行った事の謝罪は
十分でした。
健に対しては嫌悪感を
抱いてるはず。
誠意は伝わって来ました。
でも肝心な本人の
気持ちが全く逆で
肩を落とした。
謝りたくて
それでもキッカケが
ないんやろか？
そういう気持ちが
ないのんやろか？
あたしには全く
理解できなかった。
_____________
何だかめっちゃ疲れたわ。
謝る気のない人に
謝罪を求めてもなんか
意味あるんかな.....
健は話してくれた。
木下父がまともなのが
救われた思いだった。
突然お義母さんが
発言をした。
「少しいいですか？
黒川健の母親です。
今回の事は不倫した
息子が悪いです。
しかし被害者は嫁である
黒川ユカです。
木下マミさんも健も
もう大人です。
してはいけない事を
してしまったら
謝罪するのが筋ちゃいますか？
マミさんに聞きたい！
自分のお父様に土下座まで
させておいて、意地を
貼り続けますか！
謝りたくない
理由とやらを聞きたいわ」
うつむいたままの
木下マミ。
何も言わないまま
無言の時間が過ぎ去った。
限界のマックスを
遥かに超えて
発言をしたのです。